伊勢・志摩コラム「禊ぎ三昧、海水バンザイ!」

 伊勢神宮には125もの神社がある。日本の総氏神が鎮座する内宮を中心に、それぞれが森のように広く、点在している。とても一度で全てはお参りできないが、一般に「お伊勢参り」というと、まずは夫婦岩の二見興玉神社へ行ってケガレを祓い、身を清めてから宇治山田の外宮を参拝し、それから五十鈴川の内宮へとお参りする。
神域の海に入る「禊ぎ」はよくニュースで見るけれど、二見の浜で海水を身にかけても「禊ぎ」になる。伊勢の取材中、たっぷりたまったケガレを祓うべく浜へと向かったものの、気温は一ケタ台の真冬日……。
「さっぶ~!!」と浜の冷たい寒風にかじかみ、寒々と凍える波を眺めて、すごすご海を後にした。

ところが道中、この二見の海の水を使った銭湯を発見した。聞けば新鮮な海水を日に2回、タンクローリーで運んで沸かしたお湯なのだそうな。カバンの中の温泉タオルを確認した後、大音量で流れる昭和の演歌を聞きながら心ゆくまでお湯につかり、ホクホクに温まる運びとなった。「禊ぎ」となったか、体が軽い。

身体は海水と相性がいい。街で暮らしていると海の存在は遠いけれど、地球上の7割は海であり、人の体も同じく70~60%が水分でできている(数字に幅があるのは、新生児で80%→成長に従い70~65%→老人になると50%と減っていくため)。海水には、マグネシウムやナトリウム、カルシウム…といった体に必要なミネラルがバランスよく含まれており、血液や体液とほぼ同じ成分比率なのだそうだ。胎児を包んでいる羊水もそうらしい。

海水は飲めないけれど、ミネラル成分は皮膚から浸透し、体液の流れを整える。「タラソテラピー」とはその海水を使った自然療法で、言葉の響きから穏やかな施術を想像していたら、これが静かに激しい。浮力が強いから、ちょっとの動きに見えても結構な運動量なのである。一方、足腰や関節への負担がほとんどなく、日焼けの心配もないせいか、年齢層が幅広い。

プールで泳いだ後、トイレが近くなるのは「滞っていた余分な水分(=老廃物)が動くからなんです」とインストラクターさんに教わりながら、強烈なジェットシャワーを主要リンパ節に当てるプログラムをしていると、体の中がぐるぐる巡っているように感じる。「細胞が活性するので後で疲れがでますよ」と言われたとおり、遊びすぎた子どものように眠くなり、そして翌日は妙にスッキリした人になっていた。

海のチカラを思いきり借りた、「禊ぎ三昧」の伊勢の旅となった。

(了)

※本文に記載の数字はサントリー「水と生きる~水大辞典~」および、
 ニッスイ「ニッスイアカデミー~細胞外液は体内の中の海~」を参考にしました。

※文:真柴マキ(ウエルネスジャーナリスト)/2011年情報誌掲載