就活に失敗、未来設定もつまづいたまま?

首脳会議に入ったダイニングバーで、
カウンター席に、一人飲みが全然似合わない女子の姿。
20代前半か、場になじんでいない姿が気になって見ていると
半時ほどして同世代の男性が合流した。

学生時代の友達と久々の待ち合わせのようだった。
すぐ隣の席に移動してきて
「ごめん残業で…」と、始まった会話に
聞き入ってしまった。


「残業なんて、聞いているだけでうらやましい」
「私は受験も就活も失敗した負け組」

「この先、自分にはワーキングプアの道しかない」


「結婚もできないし、老後のお金をためなくちゃ」

「通勤ラッシュ、心からうらやましい」

おいおいおいおい…、悪酔いしそうなネガティブワード!
この会話で飲んで楽しいかぁ…

別の夜、遅めに入ったカジュアルイタリアンのお店では
客は私たちだけだった。
よく冷えたカヴァを飲みながら、
カウンターでお店の人と会話をしていると、遅番のフロアスタッフが登場。
20代の女子で、昼間は派遣で働きつつ
夜も二つのバイトを掛け持ちしているらしい。
やりたいことがあるのか、理由を尋ねてみると
「老後の資金のためです」という。

その後の会話は、やはりネガティブワード満載だった。

「私は学校でバカだった」
「こんなことならもっと勉強しておけばよかった」

「結婚も無理だし、一生ずっと一人」
「どうせ、たいした未来は私にはない」

時間には、前しかない。
その「前」がなくて、過去だけだ。
なのに、遥か先の「老後」だけが見えている。
若いとは、無駄にネガティブな時期でもあるけれど、
仮に彼女が25歳なら、70歳まで、45年。
生きてきた過去より遥かに長いその45年、540か月を
老後の資金のために働いて過ごすとは
クラクラしてしまった。
彼女たちは、いずれも絶望するほど器量が悪いわけでもない。
普通に笑っていれば、普通にかわいい方だろう。

受験や就活で失敗した経験のある人は星の数ほどいるし、
学校でバカだったら、この先ずっとバカかというと
そんなはずはない。
勉強は全くダメでも、社会で思わぬ頭の良さを発揮して
輝いている起業家経営者は多い。
未来へのアップグレードは、自分でするしかないのだ。

そして日本には380万の企業、600万戸ものオフィスがあるのだ。
スモールビジネス全盛のこの時代、
自分で経営する道は、とふってみたら
「そういうの、向いてないんで」という言葉が返ってきた。

前言撤回。
600万あるオフィスの、小さなひとつの経営者として、
こうもネガティブな人が同じ職場にいるのはかなり嫌だし、
伝染しそうだ、と感じてしまった。
仮にバイトで雇うとしても、
過去しかない、笑顔のない、老後しかない疲れた20代に、
時給を払う値打ちを、感じない。

ネガティブワード満載の間は、たいした未来はやってこない。
望んでいないのだから、やってくるはずない。
負けたままの自分から卒業しようと「決めた」、
這いあがろうと「決めた」あとに、
下降線のカーブは底を打つのだから。

その夜のワインは、なかなか酔えなかった。
月の姿を探しながら移動したバーにて、
ギムレットで乾杯、仕切り直し。

「恋するフォーチューンクッキー」が
頭の中でずっとリフレインしていた。

 ※( 文 / 真柴 マキ )