名作群像劇「ラヂオの時間」

三谷幸喜さんの初監督映画「ラヂオの時間」。



唐沢寿明さん演じるクールな職業ディレクターの台詞に
こんなくだりがある。
「俺はこれを仕事でやってる。
いいものを作ろう、と思ってやってるわけじゃない」

「人を感動させたいと思うなら、
この仕事、やめたほうがいいよ」

~ラヂオの時間~

いや。
いいものを作りたい。
「指示通り」ならオペレーターで充分だ。
「言われたとおりに」こなす人が集まっても、
ろくなことはない。
こんな人数で関わらなくていい。
少数精鋭、ミュージシャンがスタジオでスパークしながら
セッションをするように創れたら最高だ。
AORサウンドの巨匠でグラミー賞6冠に輝きつつ
名スタジオミュージシャンでもある
TOTOの楽曲づくりみたいに。

これまでの現場経験と照らし合わせつつ
他人事ではない気持ちで観ていると…
やがて三谷シナリオの巧妙な展開。

この職業ディレクター、
いいものを作ろうと思っているわけじゃない、けれど
まるで、いけすで泳いでいた鯛が
荒波になげだされ、渦潮に巻き込まれていくように、
必死で作品を完成させていくのだ。
あくまで「職業的姿勢」を貫いて。

こういうタイプの人、現場にいると
面倒くさいけれどかなり頼もしいかも、と
思いなおしてしまった。
きっとこのディレクターはこの夜、
とびっきり美味しいビールを味わったにちがいない。
これまで経験したことのないであろう、
変な達成感に高揚しながら。

プロ意識と熱さは、きっと別物なのだ。
真剣になった時、人は
予想を超えた仕事をするのかもしれない。

 ※( 文 / 真柴 マキ )