言葉を扱う仕事 歌われる言葉

劇作家の寺山修司さんは、歌人でもあった。
歌を詠む人の繰り出す言葉はまるで音符のように
短くても輝いている。


歌を詠む慣習は、平安時代に始まったといわれている。
皇室ではいまも日常的に詠まれているし、
一般家庭から皇族に入るお妃教育の中には
1日1句を100日間読む、といった特訓があるらしい。


31文字の言葉を選ぶ時、いちばん大切なのは、
「相手の心を感動させること」だという。
そして、和歌には「私」は登場しない。
「私の感情」もいれない。

日本の歌のルーツは、この「和歌」にある。
高橋真梨子さんの代表曲「桃色吐息」や
KinKi Kidsの「全部だきしめて」など
数多くの大ヒット曲を手がけられた、
名作詞家の康珍化さんは短歌研究会の出身という。

康珍化さんの織り成す言葉の表現は、
決してむずかしいものではない。
でも映像が浮かぶようにドラマがあるのだ。
遠い他人の話ではなく、自分にもあったかのように心に共鳴する。

JPOPの歌詞には、音の数にむりやり合わせたような、
こねくりまわした言葉がときどきあるけれど
ヒット曲を連発する作詞家が書いた詞は、
意外にシンプルだし、わかりやすい。
わき出る気持ちを書き留めた、日記みたいな歌詞ではなく、
リズミカルに音楽として流れていき、言葉だけが心に残る。

聴く人が共感する、ふさわしい言葉をひねり出す。
何度も何度も選びなおしてそぎ落とす。
言葉を磨いて輝かせた、そんな感じがするのだ。

世に送り出し、共感される「言葉」への緊張感、というのだろうか。

 ※( 文 / 真柴 マキ )