声のはなし/3●響く声のカギ、力を抜いて「すべての息を声に変える」

言葉を声で表現するために
いろいろな声のレッスンを受けたが
声で「表現する」以前に発声の壁に当たった。

すべての息を声に変える、が発声の基本だが
声の素である「息」、呼吸ができていない。
ダンサーのためのボディワークや鍼灸へ通いつつ、
「マイクに乗る声」の謎を求めて、
ある発声のクラスに参加した。


ところが、
劇団出身という指導者は、取扱注意級のコワさ。

大変に神経質かつスパルタ炸裂、まさに体育会系指導。
「息を前に飛ばせっ!」「もっと力を抜けっ!」
怒鳴り声が発せられるたびに縮みあがり、
ますます息が浅くなる。

そこに、指3本を縦にして口にくわえ、
アエイウエオアオ、を繰り返すのだ。
顎関節がおかしくなり、ついには口が開かなくなってしまった。
鍼の先生には、なぜこんなに急に首も背中も
固まったのだと驚かれ、事情を説明すると、
「怖い人には近づかないように」と笑って励まされた。

ある歌手(←自称)はヴォイストレーニングで
「身体が小さい人は響く声は出せない」と、いい切った。
もっと勉強してから人に教えてよ、と
いいたくなる指導者も多いのである。

日本語の発声方法とは
こうも確立されていないのかと、驚きの連続だった。
日本語には発音記号もないのだ。
発声の本を買いあさって読んだが、つかめない。

わかるまでやるしかない。
晴天の休日、日本橋を歩いていると
橋の欄干に一羽のカモメがとまった。
目が合ったら、「クァウウウ~」と、一声。

こんなに小さい身体で、なんて響く声を出すのだろう。
口はほぼ閉じたまま。
身体はふくふくに膨らんではいるが、
力みどころか、どう見ても、お気楽そのもの。

カモメに見とれていると、スズメがそばにやってきた。
チュンチュンチュンチュン、と
身軽にピョンピョン跳ねながら鳴いている。
こちらもふくふくのふくらスズメで、
口を開ける時は何かをついばむかあくびの時だけ。
そして助走もなく、チュンッと鳴きながら
シタッと飛び去っていった。

思わぬお手本。
がんばって響かせるとは
あまりにほど遠い、鳥たちの姿。

声を響かせるために、力はいらないのだ。
空気でふくふくに「身体を膨らませて」
「お気楽に」遠くまで飛ばして響かせていた。
あれこそ息のたっぷり入った、しなやかな筋肉だ。

「おい、見てろよ、こうやるのさ」

あの鳥たちは、神さまが遣わせた
天からの贈り物だった。
おいおい、そんなに力まずに、気楽に鳴こうよ、と。