水族館、キングペンギンにしばかれたい、ジェンツーペンギンにつつかれたい!

動物好きで、動物もののテレビ番組は好んで観ている。2010年に出版した「ペンギンの飼い方」では、大阪の海遊館と長崎にある長崎ペンギン水族館に取材協力をいただき、大変お世話になった。以前からペンギン好きだったが、取材を通じてさらにペンギン愛が増した気がしている。


ペンギンたちが、よちよち、ぴょんぴょん、のしのしと歩く姿は何とも愛らしい。人鳥類とも言われるように、まるで短足の子どもが歩いてるかのようだ。見ていて飽きない、というか、ずーっと見ていられる。

そんな愛らしい彼らだが、実は、とても臭い。ガラス越しの展示ではなかなか分からないが、取材で初めて海遊館のペンギン展示室に入ったときは鼻がひん曲がりそうだった。
ペンギン特有のニオイは「ペンギン臭」と言われている。これは、陸上でも水中でもところ構わずする出す糞のニオイと、全身の羽の手入れのためにお尻の穴近くにある尾脂腺から分泌される脂のニオイが元。魚がすえたような、独特な生臭いニオイがする。


ところが、この強烈なニオイさえ、一緒にいるとだんだんと愛おしくなってくるのだ。たぶん、ペットや家畜を飼っている人は、愛おしいと思うかどうかは別にしても、日常のことなのでさほど気にならないのではないだろうか? 取材を重ねているうち、自分の衣服に移ったペンギン臭をクンクン嗅いで「芳しい」と、一人悦に入っていた。そして取材の帰りには、決まって青魚の刺身をつまみに一杯やっていた。
犬や猫はもちろん、牧場の牛や豚、鶏など、動物にニオイはつきもの。ペットでは飼い主の都合で風呂に入れたり洗ってグルーミングをしたりしているが、自分の臭いを落とされる犬や猫たちは大迷惑なはずだ。

陸ではのたのた歩くペンギンも、水に入ればまるでヒト(?)が変わったかのように素早い動きを見せる。野生では、泳いでる魚やイカなどを捕まえるのだから動きも俊敏。そして、捉えた獲物を離さないクチバシは、まるでニッパーのように鋭い凶器である。餌の魚を一匹ずつ手で与える方式の園館さんでは、飼育員さんの指や手は、ペンギンに噛まれた傷跡だらけになっている。

さらに、猛烈なスピードで泳ぐ彼らの「翼」はフリッパーと呼ばれ、これも凶器の一つだ。空を飛ぶ鳥の翼は骨に空洞があって軽いが、ペンギンのフリッパーは水の抵抗に負けないようずっしりと重い。大型のエンペラーペンギンやキングペンギンのフリッパーは、まるでボートを漕ぐオールのようだ。そんなものを振り回して攻撃されたら相当痛いに違いない。

それでもペンギン好きとしては、キングペンギンにしばかれたり、ジェンツーペンギンにつつかれたり、イワトビペンギンに頭突きをされたいと思うのだ。そんな話を「ペンギン会議」の講演で話してみたら、同じ思いの人々が結構いて嬉しかった。

取材中は叶わなかったが、ペンギン偏愛者としては、燃える闘魂のビンタのごとく、一度はエンペラーペンギンやキングペンギンの重いフリッパーでしばかれてみたいと夢見ている。

1、2、3、ダーッ!


 ※( 文 / 福 信行 )