鶴屋南北の歌舞伎「絵本合法衢」片岡仁左衛門さん見納めの超悪役

鶴屋南北の通し狂言「絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)」。
登場人物のほぼ全員が
次々に殺される超ブラッド歌舞伎で
オープニングから誰かが殺される。

斬って斬って斬りまくる悪の二役が主役だけれど
片岡仁左衛門さんがこの二役を演じるのは
今回で見納めという「一世一代」の歌舞伎座だった。



これでもか!の極悪人役なのに、貫禄と漂う色気。
なぜ、この役を演じることを
これほどの格好良さで見納めにしてしまうかと
疑問なほど、脂ののった姿。

余裕というか隙というか、
立っているだけでその姿に説得力があるのだ。

できなくなってやめる。
できているうちにやめる。
引き際にもいろいろあるけれど…

「毎日舞台をこなすことはできても、
自分として恥ずかしくない舞台を、と思うと
これで最後に」というインタビュー記事。

約300人もの歌舞伎役者に支えられ、
400年続く伝統芸能の世界。
一世一代とは、
伝統を担う人の使命でもあるのだろう。
背中を見ている後輩に役を継ぎ、
そして歴史を継いでいく、
一流の覚悟をビシビシと感じる舞台だった。

そういえば宝塚歌劇団でも
トップスターに任命された瞬間から
引退する日を思って舞台に立つという。
熱狂的なファンはもちろん大切だけれど、
人生で初めて一度だけ観に来た人のために
「今日が最後のステージ」という想いで
舞台に出るそうだ。

真摯さや必死さがあってこそ
観る人の心に響くのかもしれない。

仁左衛門が語る、歌舞伎座『絵本合法衢』

 ※( 文 / 真柴 マキ )