接客業の第一声は「いらっしゃいませ」

飲食店のドアを開けると「いらっしゃいませ」と声がかかる。それが普通だと思っていたが、東京ではなぜか、この最初の一声がないお店が多くて意外だった。とくに、サラリーマンらで賑わうエリアでのピーク時間帯では珍しくない。「いらっしゃいませ」という言葉は、接客の基本中の基本ではないのか? 

「いらっしゃいませ」ではなく、第一声が「何名様?」「ご予約ですか?」だと、もう、初手でアウト。せっかく開けたドアをすぐに閉めて、回れ右をすることにしている。こういう店は、流行っていてもどうせロクな店ではないはずだ。

「いらっしゃいませ!」
うん、この店はOK。それに元気もいい。

だが帰り際、サントリーのバーテンダースクールで受けた接客の授業を思い出した。
「『いらっしゃいませ』は発音しやすいですが『ありがとうございました』は、意外と活舌が難しいんです。丁寧に言わないと、安物の居酒屋みたいになるので気を付けて下さい」というものだった。

店を出るとき、背中から声がした。
「あっしゃしたー!」

残念ながら、客として、あまり敬われていない気になった。

 ※( 文 / 福 信行 )