ブームで品薄が続くウィスキー|ウイスキーが蒸留所の樽で眠るあいだに

ここ数年、ジャパニーズウイスキーの人気が高い。国際的な評価を得たことやインバウンド需要もあって、とくに「山崎」「白州」「響」「竹鶴」「富士山麓」といったラベルが漢字表記の高級ウイスキーは品薄状態が続いている。


ウイスキーは製造から出荷までの期間がとても長い。足りなくなったからと急いで増産しても、それが商品になるまでには長い年月を要する。


原酒不足で続々と終売が発表されているウィスキーだが、世界で最も人気のある最高級モルトのひとつ「ザ・グレンリベット12年オークカスク」も残念ながら終売となった。世界最古の蒸留所で作られている「ザ・グレンリベット12年」だが、某ホテルのバーテンダーによると、こちらはオーク樽が手に入らなくなったゆえの終売という。


ニューポットと呼ばれる蒸溜したばかりの若いウイスキーは、樽に詰めて熟成される。5年、10年、15年と長い眠りにつくのだが、その長い眠りがまろやかな風味をもたらしてくれる。
樽の中で眠る間、熟成と引き換えに、年に数%ずつ目減りしていく。ウイスキーの熟成の秘密は、いまだに解明されていないというが、その目減り分は「天使の分け前」と呼ばれている。

酒類関係の業界紙で編集長をやっていた頃、洋酒系記事の記者も兼ねていて、ウイスキーの蒸溜所やワイナリーによく訪れた。
酒の業界にいた頃は「酎ハイ」の大ブームだった。今の品薄状態とは逆で、ウイスキーの需要は緩やかに下降していた。ウイスキーの需要にブレーキが掛かったとしても、急に減産するわけにもいかない。
その当時、今はないオーシャンウイスキーの取材で蒸溜所を訪ねた。そこでは主力の量産品ではなく、「軽井沢」という高級シングルモルトウイスキーを製造していた。当時「オーシャン」は、サントリー、ニッカ、キリン・シーグラムに続いて業界4位。シェアも3%ぐらいで、上位とは大きく水をあけられていた。その中で、主力商品ではない「軽井沢」をコツコツと作り続けていた。

取材の折、工場長がボソリと言ったことばが印象的に残っている。

「今造っているウイスキーが飲めるのは、定年後だなぁ」

今宵も、ウイスキーの天使に、乾杯。