人気店になったカフェ、取材で気づいた繁盛店の秘密

異業種からの参入で人気店になったカフェ


数々の飲食店を取材をしてきて「なるほど」と思った繁盛店がいくつかある。
そのカフェの店主は、それまで小さな印刷会社を2代目として経営されていたが、時代の流れにより会社を畳むことになった。しかしビルの立地が抜群だった。商業地域で路面の一階、天満宮や観光施設のすぐ近くと恵まれていたこともあり、検討の末、カフェに業態転換をすることにした。印刷業という異業種で飲食店の経験もなく、まったくの素人だったので「何か武器を持たないと…」と考えて「名物を作ろう」と思い至った。



名物は強力な武器だ! 「名物・カツサンド」


そのカフェの名物は「カツサンド」。注文を受けてからカツを揚げ、カウンター越しの鉄板でパンを焼く。一つひとつ丁寧に作り上げたそのカツサンドは、盛り付けも美しく、揚げたての厚切り肉とソースの相性も抜群だ。

だが、カツサンドはカツサンドである。美味しいけれど、飛び抜けて個性的、というわけではない。ましてやそのカフェ周辺には、洋食店も喫茶店もパン屋さんもある。そしてどちらのお店もカツサンドを扱っていた。
ただ、周辺のお店との違いがあった。このカフェだけが、メニューに「名物・カツサンド」と明記している点だ。

カフェのマスターの人柄もあって、今やすっかり有名になりファンも多い繁盛店である。途中からもう一つの武器「名物・アップルパイ」も加わってさらにパワーアップしている。取材対象をいつもネットや情報誌でリサーチしているメディア側にとっても、「名物」は取り上げやすいし、なんといっても書きやすい。「名物といっても、まだそこまででは…」としり込みをするオーナーも多いが、「名物」と「人気」は、言ったもの勝ちの言葉なのである。どの店にもあてはまる方法というわけではないが、名物とは「自分で作って伝える」ものでもあるのだ。

メニューにキャッチコピーで工夫を、ビールに最高!アツアツ揚げたて!


メニュー(お品書き)は、お客様との接点でもある。事前にネットや情報誌、ガイドブックなどで調べていなければ、初めて訪れるお店で注文をするときはメニューを見て選ぶ。メニュー表やメニューブックのある店もあれば、「本日のおすすめ」と記した黒板やホワイトボードを掲げる店もあるし、大衆的な食堂や居酒屋なら壁にメニューの短冊が張られている。高級割烹やBARなどではメニュー表を置いていないお店もあるが、大半のお店にはメニュー(お品書き)が置いてある。

30代半ばぐらいの店主が営む居酒屋は、オープンして数年。カジュアルな洋食系の居酒屋で、スタッフたちも明るくて元気がいい繁盛店だ。このお店では、お手製のメニューブックを使っていた。おそらく文房具屋さんか写真店で買ったアルバムだろう。メニュー名と値段に加え、かわいい挿絵とコピーが一言が添えられている。そのコピーが「おや?」と思わせるのだ。例えば「チキンバスケット」には、「ビールに最高!アツアツ揚げたて!」のコピー。別にヒネったコピーではない。「ビールに最高!」も「アツアツ揚げたて!」も当たり前と言えば当たり前だ。が、、、

「チキンバスケット 780円」
「チキンバスケット『ビールに最高!アツアツ揚げたて!』 780円」

さぁ、この2つのメニューだったら、どちらを注文したくなるだろう? 
ビールに添えられたコピーも「生ビール(中ジョッキ)『今日も一日ご苦労様でした!』 480円」。何だか愛と情熱をを感じてしまう。メニューはお客さんへのメッセージでもあるのだ。ヴィレッジヴァンガードのような凝ったコピーでなくてもいい。繁盛店の秘密の一つを見た気がした。

凝り過ぎ、こだわり過ぎのメニューはNG、「とうきび畑の想い出」とは


取材先のお店で、「何コレ?」と思ったメニューがある。
そのお店は繁華な商業エリアの路面店で、オープンして間もない創作イタリアンのお店だった。新店だが居抜きで借りた店舗で、それなりの年季が入っていた。オーナーは別に事業をしていて、飲食店でのキャリアがある40歳ぐらいの店長が取材に応じてくれた。
店長は店の概要やPRしたいポイントなどをオーナーに代わって答えてくれ、取材はスムーズに進んだ。だが、メニューブックを見せてもらい「何コレ?」となった。
そのメニューには「とうきび畑の想い出」「シンデレラの晩餐会」「森のきのこのかくれんぼ」などなど、赤面するようなポエムがずらり。
いくら創作料理と言っても、さっぱり何のことやらわからない。尋ねれば「とうきび畑の想い出」はトウモロコシたっぷりの温サラダ、「シンデレラの晩餐会」はパンプキンポタージュのようなもの、「森のきのこのかくれんぼ」はきのこを使ったパスタということだった。どれもオーナーの強いこだわりで命名したという。
メニューブックにはそれらの料理の説明は一切なく、店長は「オーダーを取るたびにお客さんに説明しなければならなくて」とこぼしていた。こだわるのもいいが、奇をてらいすぎで、誰のためのメニューブックなのかわからなかった。その後、その店がどうなったか定かでないが、お客様は誰なのか、メニューやキャッチコピーを作る時は、誰かの顔を具体的に思い浮かべて作った方がいい。